研究概要 |
銅は必須重金属元素の1つであるが, これが細胞膜を通過し, 生体内に取り込まれる機構については不明な点が多い. 本研究ではリポソームをモデル生体膜とし, これを長鎖アルキル基を有するアザクラウンエーテルで修飾し, 脂須膜外層部の銅錯体と内層部のアザクラウンエーテルとの間の銅イオン交換反応のKineticsをESR法によって研究した. (石津)またKinaticsの詳細を研究するためにストップドフロー共振器を考察し解折を行った(向井) これらの研究により銅(II)イオンの取り込みはそれぞれ値の異なった擬一次反応速度定数をもつE並進反応で進行し, リポソーム外水相のpH, 担体銅錯体(グリシン, 及びポリグリシン)錯体の安定度, 錯体の形式電荷, 疎水性に強く依存することを明らかにした. また別に長鎖アルキルを有するドキシルラジカルをドープレ, これと銅(II)錯体の磁気的相互作用の解折から銅(II)イオンの取り込みを行うサイトの分布に関する知見をえた. 合成レシケンを用いてリポソームをつくり脂須層の相転位によって銅(II)イオンの取り込みが如何なる影響を受けるか検討した. この研究により, 銅(II)イオンの取り込みには脂須膜表面における銅(II)イオイの交換のみならず, 脂須層における銅錯体の拡散が重要であることが明らかとなった. 以上の脂須膜中の銅イオンの輸送の挙動を理解するための物理的モデルの考案とこれによる解折を行った. 最後にこの様な銅(ハ)イオンの取り込みが共存するNi(ハ)イオンによって大きな影響を受けることより, 銅(II)イオンが輸送される原動力は脂須膜中のアザクラウンと銅(II)イオンの錯形成能の大きさであることが明らかとなった.
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