研究概要 |
アシル尿素誘導体からなる集積反応場を利用する研究の結果から, より優れた集積反応場を構築するためには, 2つの因子-(1)「集積反応場の対称性」と(2)「特定の反応環境(特に水を含むメディア)」-が重要であると考えられる. これらの因子の重要性を解明するために, 右図のような対になった会合性チオールIとIIを用い, その酸素酸化反応の選択性(非対称ジスルフィドと対称ジスルフィドとの生成比の1/2の自然対数, 分子識別の尺度)を検討した. その結果, 次のような知見が得られた. 1.因子1に関連して、R^1とR^2が共にn-ペンチル基およびn-デシル基の時の選択性を、水-アセトニトリル混合溶媒[水のモル分率(χ_ω)=0.42]中種々の温度(20、35および50°C)で調べ、R^1がフェニル基(R^<2^=n-ペンチル基およびn-デシル基)の時の選択性と比較した。選択性は、温度に関係なく、R^<1>とR^<2>が同じ置換基の時に、いずれも大きくなることを見出した。 2.因子2に関連して, R^1がn-ペンチル基とi-ペンチル基で, R^2がシクロペンチル基の場合について, 水-エタノール混合溶媒中で水のモル分率を変えて選択性(35°C)を調べた. 鎖状ペンチル基の識別は, 一般に非水溶媒中よりも含水溶媒中で起り易くなることがわかった. 3.分子識別における「溶媒分子の形」の重要性を解明するために, R^1がフェニル基でR^2がn-およびi-ヘキシル基の場合について, 水-n-プロピルアルコールおよび水-i-プロピルアルコール(χ_ω=0.50)中での選択性を調べた. 35°Cでの選択性は, R^2がi-ヘキシル基の時には 水-i-プロピルアルコール中で高くなるが, n-ヘキシル基の時には逆に水-n-プロピルアルコール中で高くなることが明らかになった.
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