研究概要 |
本研究では, FETのゲート部を高分子薄膜で三次元的に化学修飾した全固体型センサを開発することを目的としている. 昨年度は, 主としてpHセンサの開発に重点をおいた. 本年度は, 分離型FETのゲート部先端に直径0.2mmの微小炭素電極を接続し, その表面に二層高分子薄膜を被覆することによって各種のイオン(K^+, Na^+, Li^+, NH^+_4およびCa_<2+>)ISFETの作製を行い, その時性評価を行った. 内膜はレドックス活性電解重合薄膜(厚さ:1〜10μm, ポリ(1-ピレナミン)(PPA)ポリ(P, P´-ビフェノール)(PBP), およびポリ(2, 6-ジメチルフェノール)(PDMP)膜など), そして外膜は各イオンに対するイオノフォアを含むニュートラルキャリア(NC)膜(厚さ:300〜1000μm)からなる. 作製したISFETでは, 内膜は液膜型イオン電極の内部基準電極および溶液に相当する機能を持ち, また, 外膜はイオン選択性感応膜としての機能をもっている. イオン選択性およびネルンスト応答を示す活量範囲は通常の液膜型イオン電極のそれらに匹敵することがわかった. NC膜のみを被覆した電極では, 溶存酸素および二酸化炭素の影響がみられたが, 二層膜被覆電極ではこれらの影響がみられず, しかも長期安定性に優れ(例えばK^+-ISFETで4ヵ月間以上), 電位ドリフトも小さい(例えばK^+-ISFETで0.2mV/h)ことがわかった. また, 標準人血清および牛血しょうを用いた循環実験において, 一日以上の連続モニタリングが可能であり, しかもオートクレーブ中での滅菌(121゜C, 20分間)によって電極性能は変わらないことがわかった. さらに, 測定中の温度変化を補償するシステムを測定回路に組み込むことにより測定精度が向上した連続モニタリングシステムを試作した. 現在, 上述した二層膜被覆の原理に基づいた酵素センサの開発を行っている.
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