研究概要 |
イオンを含む液体に電場を印加すると同一符号をもつイオンが液体表面近傍に集まる. 電場が十分強くなると, 同一符号を多く含む微細な液滴が気相に噴霧されるようになる(静電場噴霧). この液滴を乾燥するとイオン間のクーロン反発によりイオンが液滴から気相へ脱離する. 本研究は, 静電場噴霧法を液体中のイオンの新しい検出法として確立し, LC-MSへ応用することを目的とする. 高圧質量分析計を用い, イオンの気相溶媒和反応を検討し, 以下のような溶媒効果に関する情報を得た. C1^-の水和においては, 異なる水和殻に属する水分子間の促進効果で水和エネルギーが大きくなる. 脂肪族アルコールでは促進効果が弱まるが, first shellの安定性が水に比べて大きくなる. ハロゲン化物イオンの中で, F^-イオンは例外的に溶媒分子と共有結合を作り易い. 複素環化合物は, 必ずしもヘテロ原子が最も安定な溶媒和サイトにはならない. LCからの試料を0.15mmの細管から流出させた. これに数KVの高電圧を印加し, 液体試料を静電場噴霧する. 液体は細い直線状のジェット流となって対極へ飛行する. ジェット流と対向して加熱乾燥ガスを流すことにより液滴を乾燥し, イオンのみを選択的に真空系へサンプリングする. 塩などの難揮発性成分による真空系の汚染を防ぐことができる. オリフィス〜スキマー間の第一真空チャンバーを10^<-3>Torr台に排気した. これによりオリフィスから自由噴流したガス分子の流れが残留ガスとの衝突により乱されるのを防ぐ. 試料として, 第四級アンモニウム塩, アデノシン, グアノシンなどを用いマススペクトルを観測した. 10^<-5>M水-メタノール溶液で, 強い分子イオンMH^+が観測された. イオンの抽出が極めて穏やかに行なわれていることが分る.
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