研究概要 |
バイオセンサのプロトタイプとして, 従来の微小針型ブドウ糖センサの最外層のpolyvinyl alcohol 膜のかわりに, 生体適合性膜としてAnthron(ANT)(東レ株), Polyoxyethvllen/Polyvinylchrolide (PEO;東レ株), Alginate-Polylyslne-Alginate (APA)膜を被覆した. これらのセンサのinvitroでの生体適合性, ブドウ糖, 酸素透過性を検討するため, 抗凝固剤なしに採血した新鮮血にセンサ先端を深漬し, センサ出力を検討した. 頻回血糖測定時, APA>PEO, PUA>ANTの順に頻回血糖測定時のセンサ特性の劣化が良好であった. また, 全センサともセンサ出力はO-500mg/dlのブドウ糖濃度に対し直線性を示し, また応答時間も2分以 であった. ANT, PUA, PEOセンサとも2-5回の全血測定によりセンサ先端の凝血塊の付着をみとめるとともにセンサ特性の劣化を示したが, APAセンサでは15回以上, 1ヶ月間にわたる全血測定が可能であった. 次に, 上記のセンサを健常犬の背部皮下組織に留置し, 静脈内ブドウ糖負荷時のセンサ反応を検討した. ANTセンサはセンサ皮下留置直後から, PVA, PECセンサではセンサ留置3日後にはセンサ出力の低下を認めた. APAセンサは, センサ留置7日間にわたり, センサ反応は, 血漿ブドウ糖濃度変化によく追随し, またセンサ出力低下を認めなかった. 留置14日目にはセンサ出力は, 留置直後の10%の出力低下を認め, また, センサ出力応答の遅延を認めた. 留置部位の皮下組織の線維化, capsulation は全くみとめられなかった. 留置センサ抜去後のinvitro検討では, センサ出力低下時には膜透過の低下とまた, センサ出力喪失時には, ブドウ糖に対するinvitroのセンサ出力を認めなかった. 以上, Alginate-Polylysine-Alginate膜は膜透過特性, 生体適合性にすぐれ, 生体留置型バイオセンサの長期臨床応用の可能性を強く示唆した.
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