研究概要 |
長鎖アルキル四級化した次の3種類の四級化臭素塩の相転移を, DSC, 臭素イオン伝導度測定, 赤外ラマンスペクトルで調べた. 1.炭素数が1つちがいの2つのアルキル基でDABCOを四級化した系;2.DABCOの1個の窒素のみを四級化した系;3.1-アザビシクロ〔2.2.2〕オクタン(ABCO)を四級化した系. 1.ではアルキル基で鎖長が短かい場合, 試料をいったん転移温度以上に加熱してから冷却すると, 構造的な乱れが凍結した準安定状態に移行することを見い出した. また, 転移に伴ない臭素イオン伝導度は1500〜5800倍ジャンプした. アルキル鎖長が長くなるにつれて相転移挙動は, すでに研究した対称型四級塩に類似してくる. 2.では2つの転移点が見い出された. ラマンスペクトルの測定から, 低温側の転移点では固体内での分子の充填が変り, 高温の転移ではアルキル鎖の激しい運動が起ることがわかった. 後者の転移点で2〜10倍のイオン伝導度ジャンプが見られた. 3.では3つの転移点が観測された. 転移挙動は2.と類似し, 最も高温の転移点で2〜4倍のイオン伝導度ジャンプが起った. 次に最近アニオン部をテトラフェニルボレートに変えた対称型塩についても相転移挙動を調べた. この塩はすべて対応する臭素塩よりも高温で転移する. 熱力学的緒量の検討から, 臭素塩よりも結晶は"かたい"ことがわかった. BF_4^-によるとみられるイオン伝導度ジャンプも観測された. 従来の研究を総合すると, 転移に伴なうイオン伝導度ジャンプは次のように説明される. 高温相ではDABCO環は固体内でほぼ規則正しい配置をしているものの, アルキル鎖部分がコンフォメーション変化を伴なった激しい運動をするため, 臭素イオンが動きうる空隙が急増し, イオンが動きやすくなるため, 伝導度ジャンプが見られる. それに対して低温相では固体内の分子の充填が密なためイオンは動きにくい.
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