研究概要 |
1.外挿型放電用電極の製作-電極部を周囲から絶縁させ, しかも取りはずしが容易にできる装置(長さ40cm,電極部0.6mmφ×1cm)を製作した. 電極部の材質は, 白金, 銅, ステンレス等種々検討したが, 電極の材質よりも電極のイオン化室内の配置が, 放電の安定性や生成する反応イオンに大きな影響を与え, その先端部がイオン化室の出口(四重極側)から約1cmほど離れている時が最適であることが判った. 2.反応イオン系の検討-酸素, 空気, 一酸化窒素など放電化学イオン化により初めてその特長を発揮しうる試薬ガスについて検討した. 特に空気については正イオンモードではO_2^+が主反応イオンで電荷交換反応によるイオン化が支配的であった. 水を用いる系では反応イオンは(H_2O)_nH^+ Cn=1〜5)でプロトン移動反応が主イオン化過程で, ソフトなイオン化が可能であった. また, 負イオンモードはいずれの系でも熱電子による共鳴捕獲反応が主イオン化過程であることが判った. 尚, プロトン親和力の大きい試薬ガスをごく僅か添加することにより反応イオン系を修飾することも可能であった. 3.大気試料の測定-テドラバッグへ採取した大気あるいは特定の物質表面上の空気をイオン源へ直結した毛管(0.25mmφ×1m)を通してイオン化室へ導入(真空システムにより自動的に約20ml/minで吸引)し測定した. その結果, サブppmレベルでスペクトルの測定が, また既知成分の選択的検出ではppbレベルの検出が可能であることが判った. 4.溶液試料の測定-水溶液の導入は種々検討の結果, 内径0.1mm長さ約30cmの毛管をイオン源へ直結し, 大気に開放されている口に溶液を注入できるアダプターを付け, マイクロシリンジで0.2μl前後注入する方法が簡便であるのみならず, 熱不安定, 強極性, 難揮発性化合物に対して有効であることが判った.
|