研究概要 |
セントロメア抗原蛋白と同一部位に存在するDNA配列を可視顕微鏡を用いて同一試料上で同時検出する細胞組織学的方法を開発した. この方法は抗原蛋白を間接蛍光抗体法により, DNA配列をbiotin化DNAをプローブとしavidin-FITCで検出を行うin situ hybridizationにより同時検出するものである. 我々は61年度までの解析によりセントロメア領域と特異的にハイブリダイズする性質をもつDNAクローン#4-1をHeLa細胞遺伝子ライブラリーより分離した. 塩基配列の解析によって, このクローンにはアルホイドDNA配列の二回繰返しが存在し, セントロメア領域への局在性を示すのはアルホイド反復配列部分であることが判明した. そこで細胞周期の様々な時期にあるHeLa細胞並びにTIG細胞について, クローン#4-1由来アルホイド配列とセントロメア抗原との相対的局在性を上記検出法を用いて詳細に解析した. コルセミド処理でM期に同調化したHeLa細胞由来の染色体では, セントロメア抗原はコンパクトなタブレットとして全ての染色体の第一狭窄部位に局在するが, alphoid#4-1配列は, 限られた染色体上に検出され, これらの染色体上ではセントロメア抗原の存在部位と完全な重なりを示した. 染色体を膨張伸長した場合も, 両者の検出部位は一致した. G1期ではセントロメア抗原もアルホイドDNAも拡がりを示し, S期が進行すると次第にコンパクトな形状をとり, G2期になると両者は共にタブレットとして存在する. 以上の結果はalphoid繰返し配列そのもの, 或は繰返し配列の間に分布する特定の配列が動原体形成及びセントロメア機能に必須な役割りを果すとの仮説を支持している.
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