研究概要 |
典型的なモザイク卵の一つとして知られているホヤ卵では, 古くから, 分化の決定に関与すると思われる卵細胞質決定因子の存在を示唆する実験的証拠が数多く得られている. 本研究所では, ホヤ胚における筋肉細胞の分化に的をしぼり, 筋分化決定因子の分子的背景を解析するとともに, そうした刺激にどのように応答して筋肉細胞分化に関わる遺伝子の発現が起こるかを明らかにすることを目的とした. 1.筋肉細胞決定因子の解析:筋肉細胞決定因子はマイオプラズムと呼ばれる細胞質に含まれていると考えられている. コウレイボヤ卵のマイオプラズムが青白い自家螢光を発する特徴を利用してマイオプラズムを単離し, それを抗原としてモノクローナル抗体を作製したところ, マイオプラズムを特異的に認識するモノクローナル抗体が12クローン得られた. その中のIIG6B2抗体は, 遠心によっては動かない卵表層細胞質構成成分を認識し, 抗体を受精卵に顕微注射すると, 実験胚の80%で筋特異的酵素アセチルコリンエステラーゼの発現が抑えられた. イミュノブロット法によりIIG6B2抗原を解析してみると, 分子量約37Kd, pI50K 単一の分子を認識していることが判った. 現在, コウレイボヤ卵巣から得たポリ(A)^+RNAに対するcDNAライブラリーを作製し, 抗体を利用してこの抗原蛋白質をコードする遺伝子の単離を試みている. 2.筋肉細胞特異的遺伝子の解析:筋肉特異的遺伝子のうち, アセチルコリンエステラーゼ遺伝子, ミオシン重鎖遺伝子, アクチン遺伝子のcDNAプローブを得る努力を行っている. そのうちミオシン重鎖遺伝子断片を含むcDNAプローブを当研究室で, またアクチン遺伝子のcDNAが他の研究室で得ることができた. 現在, 様々な方法でこの遺伝子の発現パターンを解析している.
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