研究概要 |
1.ラット・オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)染色体遺伝子の単離と構造解析. OTCは尿素サイクル酵素の1つであり肝および小腸粘膜に局在する. 本酵素は先ずミトコンドリア外部で分子量が3600ほど大きい前駆体として合成された後にミトコンドリアに移行して成熟酵素に転換される. すでに単離したcDNAをプローブに用いて遺伝子ライブラリーをスクリーニングし, 遺伝子全長を含むファージクローンを単離した. 制限酵素地図作成, サザンブロット分析により, 本酵素遺伝子は75Kdにおよび, 10個のエクソンにより成ることが明らかとなった. 延長ペプチドの32アミノ酸残基の26残基が第一エクソンにのっており, ミトコンドリア移行のシグナルとして働く延長ペプチドはエクソンシャフリングにより生じたと考えられる. 転写開始部位上流から第一イントロンにかけてヒトとラットで高い相同性が見られ, この領域が本酵素遺伝子の発現制御に関与する可能性が考えられた. 2.ミトコンドリア型3-ケトアシルCoAチオラーゼcDNAの構造解析. 本酵素は例外的に延長ペプチドを持たず, 成熟酵素と同じサイズで合成される. したがって成熟酵素蛋白質内部にミトコンドリア移行を指令するシグナルが存在すると考えられる. この内在性ミトコンドリア識別シグナルの構造を明らかにする目的でcDNAクローニングおよび一次構造の決定を行った. その結果, 本酵素は397アミノ酸残基よりなる分子量42000の蛋白質であり, 分子量およびアミノ酸組成は精製酵素の分析結果とよく一致した. またN端の14アミノ酸残基およびN端から130-145にかけて複数の塩基性アミノ酸が出現し, 酸性アミノ酸がない部位が存在し, 前駆体の延長ペプチドの構造とよく似ており, これらの部位がミトコンドリア識別に関与する可能性がある.
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