研究概要 |
カルシウムイオン(Ca^<2+>)がセカンドメッセンジャーとして機能するためには, 平常時はサイトゾルのCa^<2+>は10^<-6>以下に保持され, 細胞が刺激を受けた時に一過的に10^<-6>M程度に上昇しなくてはならない. サイトゾルCa^<2+>濃度を低く保つ機構として, Ca^<2+>の細胞外への排出と細胞内オルガネラへの隔離が考えられる. 植物のサイトゾルCa^<2+>濃度調節機構を知る目的で, トウモロコシ黄化葉から, 各種オルガネラを単離し, それらのCa^<2+>輸送能を調べた. まず, ミトコンドリアは高い輸送能を示したが, Kn(Ca^<2+>)≒30μMであり, 10^<-6>M前後で変化する濃度の調節に寄与する可能性は少ないと考えられた. 次にミクロソーム分画に混在する他の膜成分をほとんど含まない原形質膜を単離した. この単離膜はright-side outの小胞を形成しているため, そのままではCa^<2+>輸送能もH^+輸送能も持たなかった. Triton X-100処理によりinside outの小胞に変換すると, 両イオンの輸送能が発現された. この反転膜小胞を用いて, ^<45>Ca^<2+>輸送を測定した. Ca^<2+>輸送にはATPとMg^<2+>を必要とし, 至適pHは7〜8であった. pH7においてKm(Ca^<2+>)=1.6μM, Km(ATP)=8.5μMであった. このCa^<2+>に対する高い親和生は, サイトゾルモデュリンにより約15%活性化を受け, カルモデュリン阻害剤によって約15%阻害されたことから, 少なくとも一部はカルモデュリン依存性ATPアーゼが働いているものと考えられる. 一方, 原形質膜をATPとMg^<2+>と共にインキュベートすると膜タンパク質がリン酸化を受けることを見出した. このリン酸化には10^<-5>M程度のCa^<2+>を必要とするが, カルモデュリンやCAMPによっては影響されなかった. このCa^<2+>依存性プロテヘィンキナーゼと, Ca^<2+>輸送性ATPアーゼの関係は興味ある課題である.
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