研究概要 |
1 ムギネ酸類合成部位の探索:鉄欠乏エヒメハダカムギ体内のムギネ酸類の存在量を, 地上部, 根, 導管液, 篩管液で測定した. 根内の量が最も少なく, 地上部にも存在したが, 篩管液にはごく微量しか検出されず, 導管液には存在するところから, 合成部位は根であり, 導管を経て地上部にも運ばれるものと推定した. さらに, 鉄欠乏トウモロコシの根を先端から基部まで, 1cmずつに切り, それぞれのムギネ酸類存在量を測定したところ, 根の先端部分の含量が最も高く, 同時にトウモロコシが分泌するのはデオキシムギネ酸であることが判明した. ムギネ酸類は, 主に根の先端部で合成されると考えられた. 根のどの細胞で, 細胞内のどこで合成されるかについては現在検討中である. 2 前駆本アミノ酸の決定:ムギネ酸類はその構造式から, アミノ酸3分子より合成されるものと考えられるが, 前駆体アミノ酸は不明であった. 鉄欠乏によりムギネ酸合成を誘導したムギ類, ならびにイネの根に各種の標識アミノ酸を投与し, ムギネ酸類への取り込みを, HPLC, ラジオアナライザーにより調べた. 投与時間30分では, 1-^<14>C-メチオニンのが取り込まれ, 他のアミノ酸, 酢酸の取り込みはみられなかった. 葉では取り込まれなかった. この結果から, ムギネ酸類生合成経路における前駆体アミノ酸がメテオニンであること, また根で合成されることが明らかになった. 放射活性取り込の順序, 構造式, ならびに各イネ科植物におけるムギネ酸類の存在様式から, 現在, 以下の生合成経路を推定している. メチオニン⇒⇒アベニン酸⇒デオキシムギネ酸⇒ムギネ酸⇒ハイドロキシムギネ酸. ムギネ酸類生合成経路における前駆体アミノ酸が特定されたことによって, 合成誘導機構の解明へむけて大きな前進がもたらされた. 現在生合成経路の酵素を単離すべく準備中である.
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