研究概要 |
まず細胞内のアクチンの動態をとらえるためウニ卵の受精の過程を観察材料とし, 1)アクチン繊維を蛍光標識ファロイジン染色によって可視化し, また2)蛍光標識アクチンを生きた細胞内に顕微注入し, その動きを蛍光顕微鏡観察で追跡した. その結果, 未受精卵においてはアクチン繊維はわずかに微繊毛中に存在するのみだが, 受精後, 精子侵入点よりその重合が開始され, 受精丘となってもり上がり, また細胞全体に重合が波状に広がっていき, 細胞膜下に層を形成することが分かった. この層は5〜6分後には再び薄くなって以後変化しなかった. またこのアクチン繊維層では周囲のアクチン分子と繊維の速かな交換がおこっていることが, 蛍光偏光回復実験により知られた. この交換の速さは試験管内で知られるアクチン繊維のトレッドミリングによっては説明ができない. これらのアクチンの激しい動態は様々なアクチン調節タンパク質によって支配されていると考えている. それらのうちの1つとして今年度は, 高分子量アクチン結合タンパク質をウニ卵可溶性画分から単離し, その性質を明らかにすることができた. このタンパク質はシラヒゲウニ卵可溶性画分を加熱して生ずるゲルの中に含まれ, 分子量255,000の鎖が2量体で存在し, 長さ約170nmの棒状ではあるが5〜6個の大きな球状ドメインを持つ分子であった. ニワトリ砂のうワイラミンの抗体と弱いながら反応したが, ニワトリ赤血球スペクトリンの鎖の抗体とは反応しなかった. アクチン繊維と混ぜると繊維を架橋してその結果ゲルを生成した. この反応の至適条件はpH6〜7, 20mMKclで, Caイオンは反応と無関係であった. また従来, その正体が良く分からなかった, やはりシラヒゲウニ卵可溶性画分のゲルに含まれる"220Kタンパク質"は実は分子量が240Kであり, 我々が昨年報告したウニ卵スペクトリンに他ならないことが免疫学的に確かめられた. 以上, 本年度の計画をほぼ達成した.
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