研究概要 |
超伝導高圧NMR法を用いて種々のヘムタンパク質の構造に及ぼす圧力効果を詳細に研究した. 先ずチトクロムCについては, 酸化型では昇圧に伴って, ヘム鉄に配位している第6配位子のメチオニン残基に置換された. 一方還元型では, このようなリガンド交換は全く起らず, ヘムCのプロピオン酸と相互作用しているトリプトファンー59残基のNH【double half arrows】D交換速度が高圧下で著しく減少した. この交換速度の圧力依存性から活性化体積は250〓^3と見積もられた. さらにこのトリプトファンと相互作用しているイソロイシンー57のプロトンNMRシグナルも昇圧と共に選択的にシフトし, これらチトクロムCの電子伝達機能発現上重要と考えられているアミノ酸残基の特異的な圧力依存性は, 高圧下でチトクロムCが酸化され易くなる構造上の要因と考えることができる. また酸化型が高圧下で還元されにくくなることも, 酸化型を安定化するリジンのアミノ基がメチオニンに入れ替ることから説明することができる. またこの高圧NMR法を用いて, アポミオグロビンとヘムとの結合反応速度ならびにミオグロビンのヘムの交換反応速度の圧力依存性を追究した. その結果, 両者において圧力依存性は全く異なり, このことは両反応の機構が異なることを示唆している. すなわち, ヘムポケット内に結合したヘムが反転する反応は, 一度ヘムがタンパク部外に出てアポタンパクを生成するのではなく. タンパク質の構造的ゆらぎによって反転することを示している.
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