研究概要 |
蛋白質の構造と機能を, 遺伝子工学の手法により実用的になったアミノ酸置換の影響を通して探ろうとする研究が多いが, モジュール構造のような, 2次構造と3次構造の中間に位置し, 蛋白質の構造・機能の単位と思われるものに着目した研究は非常に少ない. この研究では, 蛋白質の「部品」構造に対応すると思われる部分蛋白を作製して, その構造と機能を調べることを目的としている. そのために, 昨年度は, 特定の蛋白質部分をリンカー等に由来する外来のアミノ酸配列を含まずに直接発現できる, 新しい発現ベクター, ATG-TAG直接発現ベクター, を開発した. 今年度は, そのベクターに挿入する, 蛋白質の特定部分に対応する遺伝子断片を得ることを目的とした. 一般に目的の部位に丁度制限酵素認識部位が存在する確率は低いので, エキソヌクレアーゼを用いてDNAを削ったものの中から, 目的の部位まで削れたものを選択する方法の開発を試みた. 予め導入された, ある制限酵素認識部位の一部を提供する一端と, エキソヌクレアーゼで削られた他端とをライゲートしてプラスシドを再環化し, 目的のクローンでのみその制限酵素認識部位が再生することを利用して選択する方法は, 数百〜千個のクローンを対象として制限酵素切断アッセイを行う必要があり, 効率が悪い. そこで, 再環化の段階で環化せずに残った線状分子を特異的に除去し, 次にその再生部位で切断を受けて線状化する目的のプラスシドのみ, 薬剤耐性遺伝子を導入することによって, ポジティヴに選択するという手法を考案した. この手法中, 線状分子を特異的に除去するステップでは, 熱耐性差を利用する, あるいはエキソヌクレアーゼを用いる方法が有効なことがわかった. しかし, 各ステップにおける収率やゲル中の酵素活性抑制物質のために, 現在までの所, 最終的な成功には至っていない. 今後, これらの点の改良を行ってゆく予定である.
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