研究概要 |
1.Galα1→3Galβ1→4GlcNAc→Rというラクトシリーズの糖鎖構造の一部を認識するモノクローナル抗体(2C5)が, 嗅覚受容細胞(嗅細胞)の特定のサブタイプを選択的に認識することを昨年度報告した. 本年度は, この抗糖鎖モノクローナル抗体や他の嗅細胞サブタイプ認識モノクローナル抗体を用いて, 嗅細胞の各種サブタイプの嗅球への軸策投射様式を詳細に解析した. 2.成体のウサギの鼻腔内では2C5陽性サブタイプ嗅細胞は嗅上皮全域にわたって広く分布し, 2C5陰性のサブタイプ嗅細胞と入り混じって存在していた. 一方, 2C5陽性サブタイプの嗅神経線維は嗅球のほぼ全域に投射していたが, 個々の糸球(嗅球内の球形の神経叢で, 嗅神経線維の終末形成部位)内に終止している嗅神経線維は, 「ほぼすべて2C5陽性のサブタイプ」であるか又は「ほぼすべて2C5陰性のサブタイプ」であるかのどちらかであった. このことは「異なった膜表面糖鎖を表現している上記2つのサブタイプの嗅神経線維は, 異なった糸球へと投射し, したがって異なった嗅球内ニューロンとシナプス結合をしている」ことを示唆している. 3.各種抗糖鎖モノクローナル抗体および嗅神経サブタイプ認識モノクローナル抗体を用いて, ウサギにおける嗅神経線維の嗅球への投射の生後発達を免疫組織化学的に調べた. 生後1日目ではまだ非常に小さな糸球しか形成されていなかったが, この時期でも異なったサブタイプの嗅神経線維は異なった糸球へ投射する傾向を示した. 生後発達とともに糸球の直径は増加し, サブタイプごとの糸球特異的嗅球投射はより顕著になっていった. 4.今後は上記糖鎖構造を認識するようなタンパクが嗅覚系に発現しているかどうかを調べる研究に重点を置くことを計画している.
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