研究概要 |
ネコの赤核を介する条件付けは, 大脳-赤核線維の刺激と前肢の皮膚または青斑核の刺激を組み合せたときに特異的に成立し, 大脳-赤核シナプスの伝達効率が上昇する. この大脳-赤核シナプスの可塑的変化の実態と過程を調べることが本研究の目的である. 1.大脳-赤核シナプス電位と赤核ニューロンのケーブル特性から示唆されていた大脳-赤核シナプスの新生が, 電子顕微鏡像の定量的解析により明らかになった. 2.条件付けは大脳-赤核線維と青斑核の刺激を一定の時間間隔で組み合せることが必要であり, ランダムな時間間隔で組み合せた場合には条件付けが成立しない. したがって, この行動変化は連合条件付けである. 3.大脳皮質感覚運動野から赤核ニューロンへの伝達物質候補であるグルタミン酸と, 青斑核ニューロンの主要伝達物質であるノルアドレナリンの赤核ニューロンに対する作用を, 生後3〜4週齢のモルモットから切り出した新鮮脳切片を用いて電気生理学的に調べた. 4.グルタミン酸は赤核ニューロンの入力抵抗の減少を伴う一過性の脱分極を誘発した. 5.ノルアドレナリンの投与により, 赤核ニューロンの多くで3〜10分間持続する脱分極が記録され, 入力抵抗の増加が観察された. 6.ノルアドレナリンまたはそのα_1受容器のアゴニストであるフェニレフリンの投与により, 活動電位の後過分極電位のうちCa^<TT>依存性K^Tチャネルによる遅い成分が選択的に減少した. 7.グルタミン酸とノルアドレナリンを同時に投与する効果と各々を単独に投与する効果を, 赤核ニューロンの発火応答を指標に調べ, 両者の差を見い出した.
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