研究概要 |
本研究はサルの前頭前野における学習性の活動変化をいわゆる光学的記録法を用いて検出することを目的としている. 方法が新しいものであり, 記録条件を確立すること自体が重要な部分を占めているので, 本年度は基礎的段階の年と位置づけて記録システムの開発と, これを用いてのラットの大脳皮質における予備実験とを行った. システム生物顕微鏡, 金属顕微鏡などから適当なユニットを選んで組み合わせ手術用顕微鏡型でかつ落射照明が可能な蛍光顕微鏡を構成し脳定位固定装置に固定した. 光源は水銀燈よりも安定なハロゲンランプを使用するが市販のユニットは光量が弱くゆらぎも大きいので高出力用の電源回路他一式を製作した. 脳定位固定装置につけたラットの大脳皮質口腔感覚野を露出し, リンガー液に溶かしたスティリル系色素で染色してG励起で蛍光を観察した. 染色した領域は明るい蛍光を発する. この状態で口腔内刺激を行い対応する蛍光像の輝度変化を調べた. 測光には当初TVカメラを用いた. ビデオ信号をアナログ画像処理を通して背景光のカット, 変化分を増巾を行い, ディジタル画像処理で変化分を検出するシステムである. しかしこのシステムは変化分の大きいことが必須であり, 初期の試行錯誤の段階で採用するのは不適当であった. そこでダイナミックレンジの広いフォトダイオードを受光素子とした系を組んだ. 大口径のシングルエレメントフォトダイオードを自作のアタッチメントによって顕微鏡に取り付け, 電流-電圧変換, フィルタ, 増巾回路からなる系で視野のある領域内全体の光量を測定した. 領域内のトポグラフィーを調べることはできないが, この方法で信号をとらえることによりはじめて様々なテストが可能になり改良の路が拓けた. 背景光に対して10^<-3>の大きさのパルセイションに乗って極く微弱な変化が見られている. 現在このシステムを用いてより大きな信号を得る努力を続けているところである.
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