研究概要 |
網膜・視蓋の投射パターン形成には膜糖タンパク質が重要な役割を果していると考えられており, このことを確かめるため以下の実験をおこなった. コバルト・ツニカマイシン・モネンシン等は神経細胞のゴルジ体に作用しゴルジ体を経由した糖タンパク質の神経軸策内輸送を特異的に阻害する. 孵卵5日目のニワトリ胚の片眼にこれらの阻害剤を注入し, 視神経および視交叉の形成に及ぼす影響を調べた. 視神経のトレーシングには螢光色素のDiIもしくはビオチン・スクシイミドを阻害剤注入の眼に投与し孵卵8〜9日目で断頭後固定をおこなった. 液体窒素により凍結し, 凍結切片を作製し螢光顕微鏡下もしくはストレプトアビジン・HRP-DABで発色の後, 光学顕微鏡下で観察し視神経の形成にどのような影響が生じたか調べた. これら阻害剤を注入したニワトリ胚では, 正常時とは異なり視神経の成長方向に誤りが多く見られ, 特に眼一眼の投射が著しく観察された. 正常なニワトリおよびウズラにおいても同側の視蓋や反対側の眼への視神経の誤った投射が観察されてはいるが, 阻害剤投与により膜糖タンパク質の輸送が阻害され, 糖タンパク質によって保たれていた視神経の秩序が消失したために視交叉が正常に形成されなかったと結論づけられた. どのような糖タンパク質が変化すると成長方向に異常が生じるかを明らかにするため, 神経軸策内輸送の阻害剤と同時に放射性同位元素で標識したアミノ酸および単糖をニワトリ胚の眼に注入し, 視神経の糖タンパク質が正常時と比べどのように変化するかSDSゲル電気泳動, オートラジオグラフィ等で検討をすすめている.
|