研究概要 |
1.遺伝性高脂血症WHHLウサギで, 増量した血清脂質の血管壁に及ぼす影響を初めに病理組織学的に光顕及び低倍率の電顕で観察した. 加令1年5カ月では, 腹部胸部大動脈, 頚動脈, 腎動脈, 及び冠動脈で明らかに血管壁の肥厚と動脈によっては閉塞に近い状態も見られた. 電顕では血管内皮細胞層の崩壊と周辺に肥体に沢山の脂肪滴を蓄積したマクロファージの侵入が確認された. また, 血管内皮層の一部には血小板の数層に重なって粘着凝集してもり上った附着も認められた. その血小板内部には沢山の顆粒が認められるものもあった. 血管壁の肥厚部では血管内皮層と内部弾性板間にマクロファージや平滑筋細胞が多数認められた. 部位によっては内部弾性板の破壊やコレステロール結晶の沈着, フィブリン様物質の沈着なども認められた. 著顕なこととして, 血管壁被膜に脂肪が附着し, 大きな油滴をマクロファージが取り囲んだような像が一面に見られることである. 確かにWHHLウサギの加令によって典型的な動脈硬化病変が確かめられた. 2.他方, 若いウサギや抗動脈硬化作用を示すと思われるスルファチド長期投与群では血管壁への脂肪の沈着などは認められたが, 線維性プラーク病巣は余り認められず, 内部弾性板も比較的よく保たれているのは対照的であった. 3.以上の知見は, WHHLウサギになんらかの動脈硬化を抑制する因子の存在を示唆したが, 血清LDLなどに主要スフィンゴ糖脂質としてスルファチドが認められることは, この可能性を示すものとして注目された. 4.WHHLウサギのプラーク病巣に余り血液凝固の血栓が見られないのはスルファチドの抗凝固作用とも関連があるのではないかと考えられた. スルファチドの動脈硬化病変に及ぼす生化学的検索がもっとなされなければならないだろう.
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