研究概要 |
血管平滑筋収縮のCa^<2+>依存性制御機構の詳細はまだ明かではない. 私たちは平滑筋および非筋肉組織においてアクチン繊維の機能を調節するカルモデュリン結合蛋白質=カルデスモン(CaD)を発見し, アクチンーミオシン相互作用が, ミオシン側[ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)によるミオシン燐酸化]およびアクチン側[CaM-CaD-アクチン間のフリップーフロップ結合]の両側制御を受けていることを明らかにしてきた. 本研究では, 以下の検討を行った. 1.CaD分子の機能ドメイン:h-CaDをα-キモトリプシンで限定分解して得られるC末端35kDaのフラグメント上に, CaMおよびアクチンと結合するドメインが存在する. 単離した35kDaフラグメントだけでもフリップーフロップ結合を示し, アクチンーミオシン系を制御できる. 2.3次元収縮モデル:アクチンーミオシン系が張力を発生するための収縮支点の候補がフィラミンである. CaDはアクチン・ミオシン系以外にフィラミンのアクチン繊維架橋能をも制御しており, 両者を組合わせた収縮モデルを作成した. アクチン・ミオシン・収縮調節蛋白質・フィラミンをガラス毛細管内に入れてATPを添加すると, 3次元的な蛋白質ゲルの収縮が観察された. フィラミンはアクチンをゲル化し, ミオシンが作用してゲルの収縮を来すのである. CaDはこの系に抑制的に作用し, Ca^<2+>・CaMはその抑制を解除する(フリップ・フロップ制御). 三次元収縮モデルは, ゲル化-収縮・ゾル化-弛緩連関を示唆する. 3.h-CaD【double arrow】CaD発現転換:CaDには, 平滑筋に優位な高分子型(h-CaD,140-150kDa)と, 非筋肉組織にみられる低分子型(l-CaD,70-80kDa)の2型が存在する. ニワトリ砂嚢の発生を追跡すると, 発生初期にはl-CaDが存在するが, 平滑筋への分化に同期してh-型に転換した. 逆に, 培養動脈平滑筋細胞が脱分化するとき, h-からl-CaDに移行し, さらに再分化によりh-CaDが出現した.
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