研究概要 |
血中ドーパミンの由来とその代謝排動態, 内因性ドーパミンの心血管系への作用とその生理的意義などについてはまだ不明な部分が多い. また, 血中ドーパミンはその大部分が硫酸抱合体として存在しており, この抱合体の体内動態や生理的意義についてはさらに知見に乏しい. 本研究の目的は, われわれが開発した, 生体試料中のドーパミンおよびその2種の硫酸抱合異性体の高速液体クロマトグラフィーによる定量法を応用して, ドーパミン硫酸抱合体の生体内動態と血管壁に対する作用を明らかにすることにある. 本年度は, イヌ動脈血管のドーパミン, ドーパミン硫酸抱合体含量および, 2種の硫酸抱合体を基質としたときのアリルスルファターゼ活性(脱抱合反応)を測定し, 抱合体が内因性ドーパミンの貯蔵型として機能している可能性について検討した. イヌ血管壁の遊離型のノルアドレナリンおよびドーパミンは, 腸間膜動脈が最も高く, 大腿動脈が最も低い値をとり, 両者の間に相関が認められた. 一方, ドーパミン硫酸抱合体については, 3-0-抱合体のみが検出できたが, その含量は血管の部位によって大きな差がなく, また遊離型ドーパミン含量との間にも相関がなかった. 各部位の動脈血管粗抽出液とドーパミン硫酸抱合体の2種の異性体をインキュベートした結果, 血管壁に存在するアリルスルファターゼは, ドーパミン硫酸抱合体の異性体のうち4-0-抱合体を脱抱合するが, イヌの組織中に見いだされる3-0-硫酸抱合体に対しては全く作用しなかった. これらの結果から, ドーパミン硫酸抱合体は, ドーパミンの貯蔵型として存在し局所で脱抱合して生理活性を現わすという可能性は少なく, ドーパミン代謝の終産物であると思われる.
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