研究概要 |
現在個々のヒト遺伝子の構造解析は急速に進んでいるが, 本研究はこれをさらに発展させて, 疾患発症過程に働く遺伝的支配を理解し, 遺伝子DNAに基づく新しい医学研究の確立を推進するためにはいかなる方策をとるべきかを考えようとするものである. 活動はヒト遺伝子の構造から行うその発現機構の解析, 染色体全体あるいはその部合的領域から進める遺伝子発現調節機構の究明, ヒト遺伝子の持つ特色と機能を焦点とした解析法とその延長としてのDNA診断法の検討, 及び病因遺伝子の単離と同定の4つを目指す研究をそれぞれ調査するグループに分かれて行った. その結果ヒトゲノムのマッピングと塩基配列決定をいかに進めるかと, ヒト遺伝子系に独特な構造は何かの2点を取り上げて研究の現段階を整理し, 1月11日に東京で公開シンポジウムを行った. そこでは第一の問題についてわが国が世界に先駆げシステム工学の考え方に基づいた塩基配列の自動分析装置を開発しつつあり, ヒトゲノムDNAの約30億基塩対の全配列決定も可能となるであろうと言う現状が紹介された. これに対してこのような塩基配列決定の機器化を観迎しつつも, 直ちにヒトゲノムDNAの解析にはいることの意義, 実行の可能性, その組織のあり方について多くの疑問が寄せられた. またヒトの全cDNAの塩基配列決定も提唱されたが, これにも多くの批判が述べられた. したがって現在は重要な遺伝子について個々に解析を進めるとともに, 染色体の大きな領域を取り扱うより一層容易な技術を成熟させつつ, 将来に準備すべきであろう. 第二の問題についてはヒトのヒトたる特徴を担う遺伝子, 諸疾患に対応する遺伝子の解析の重要性が説かれ, 発癌遺伝子, 発癌抑制遺伝子, RFLPの意義, 反復配列, トランスジェニックマウス作成, 生理活性物質の研究に関する知見が総括され, 今後の方向が討議された.
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