研究課題
一般研究(A)
(1)中枢神経系の各種ニユ-ロンを選択的かつ特異的に染め出すモノクロ-ン抗体を本年度までの研究によって多数作成し、ホ-ルマウント標本および切片標本でその特異性を詳しく検討した。その結果、(1)中枢神経系で特定の体節のみで左右1対または副数対のニュ-ロンのみを認識するモノクロ-ン抗体、(2)シナップス形成期および神経軸索伸長期に相当する胚期と蛹期にのみ特異的に、しかもシナップス形成場所に一致して発現する抗原など、多数の興味深いクロ-ンを見いだした。(2)第2染色体上に誘発した多数の致死遺伝子の中から神経系異常をもつ変異を同定し解析を行った。昨年に引続き胚細胞の初代培養系を利用し、それらの胚発生期の細胞分化を組織特異的モノクロ-ン抗体を用いて検定した。その結果、最も興味深いものとしては、中胚葉と神経外胚葉との分化のスイッチと思われる遺伝子の同定に成功した。これはこれまでに知られていない新しいタイプの分化決定遺伝子であり、胚細胞の初代培養によって調べたところ、筋パイオニア細胞は出現するが、その細胞でのmyoDの発現が認められないことを証明できた。また下にのべるエンハンサ-トラップ法によってこれらの遺伝子のアレルを誘発し、そのP因子内にあらかじめ挿入しておいた大腸菌のlacZ遺伝子の発現によって、当該遺伝子の組織・発生段階特異的発現の様式を解析した。(3)胚期のニュ-ロブラストの出現パタ-ンとその時間経過はこれまでの研究でかなり明らかとなっているが、蛹期のニュ-ロブラストの分化パタ-ンはまだあまり解析がされていない。そこで本年度は、蛹にブロモデオキシウリジン(BrdU)を投与して、分裂期のニュ-ロブラストへの取込みを酵素抗体法で検出する方法で、蛹期ニュ-ロブラストの分化を解析した。その結果、特に茸体に軸索を送る一群のニュ-ロンが他のニュ-ロブラストの分裂が終わった後も長期にわたって生まれ続けることを明らかにした。(4)いったん突然変異が誘発された場合に、より簡単にクロ-ニングを行えるようにするための単一P因子挿入タッギング法を開発・改良した。この方法を応用してP因子転移に伴う転移元および転移先の塩基配列の解析を行い、P因子タッギング法についての基礎デ-タを得た。(5)エンハンサ-トラップ法を導入し、中枢神経系や成虫原基の特定の細胞のみで遺伝子発現をおこすエンハンサ-のスクリ-ニングを行い、成虫原基の位置情報(Positional Information)のパタ-ンに良く一致した発現をするエンハンサ-を同定した。
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