研究概要 |
原子核による光吸収断面積は、光子のエネルギーが40MeVから140MeVの領域において、原子核の集団運動や核子の励起等による光吸収過程が小さいため、互いに相関しあう2核子による光吸収機構に支配される。このエネルギー領域の光子によって励起された原子核の終状態から放出される2核子の角度及びエネルギー相関を観測することにより、核内核子の相関や中間電流効果を調べることが出来ると考えられている。本課題における研究では、測定する陽子及び中性子を効率良く同時計測するために、大立体角陽子検出器を製作した。この検出器は、プラスチックシンチレーターによる30組のΔEーE型カウンターテレスコープで構成されており、全立体角は1.02srでエネルギー分解能は陽子エネルギーの5〜10%である。中性子の測定は液体シンチレータを用いた。 実験は東北大学理学部原子核研究施設の標識付光子発生装置からの、エネルギー24〜102MeVの準単色光子を用い、(γ,n)、(γ,p)、(γ,np)、(γ,pp)の微分断面積で測定した。標的原子核は^4He,^<6,7>Li,^<10>Bである。得られた実験結果は、エネルギー損失の小さい領域において、殻に対応するエネルギーで放出される陽子の断面積は直接過程を径由すると仮定するとPWPA計算と良く一致し、この仮定の下にS及びP殻にある核子の運動量分布を求めることが出来た。測定出来る運動量範囲は(e;e┣D11p)では困難な高運動量に対応しており、この方法の有用性を示めすことが出来た。高いエネルギー損失領域からは2核子が放出されこれらの角度相関は重陽子のものと似ており、この領域における2核子(陽子ー中性子)による光吸収の重要性を示めすことが出来た。
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