| 研究概要 |
キュバン型、または不完全キュバン型硫黄架橋モリブデンおよびタングステンクラスタ-錯体の合成・構造決定・物性測定をおもに行なったが、クラスタ-合成の原料として単核モリブデン錯体の簡易合成法開発および複核タングステン錯体の新規合成および構造決定も行なった。
1)不完全キュバン型アクア錯体、[Mo_3S_4(H_2O)_9]^<4+>、が金属(鉄、コバルト、ニッケル、銅、スズ、水銀)および金属イオン(スズ)を取り込み、キュバン型アクア錯体に成ることを明らかにすると共に、これらのアクア錯体のX線構造を決定した。反応生成物の骨格は金属の種類により、シングル([Mo_3MS_4(H_2O)_<10>]^<4+>;M=Fe,Ni)、ダブル([H_2O)_9Mo_3S_4MMS_4Mo_3(H_2O)_9]^<8+>;M=Co,Cu)、およびサンドイッチ([(H_2O)_9Mo_3S_4MS_4Mo_3(H_2O)_9]^<8+>;M=Sn,Hg)の三種ノキュバン型クラスタ-に分類できる。また、マグネシウム、アルミニウムなど還元力の強い金属ては骨格の再編成が起こっており、サンドイッチ型、[(H_2O)_9Mo_3S_4MoS_4Mo_3(H_2O)_9]^<8+>、と成る。物性としては、メスバウア-効果、磁化率の測定を行った。2)不完全キュバン型骨格W_3O_<4-n>S_n(n=1-4)、Mo_3O_<4-n>S_n(n=1-4)、MoW_2S_4、およびMo_2WS_4、をもつ錯体を合成しX線構造解析とともに物性の測定を行なった。3)キュバン型アクア錯体、[Mo_4S_4(H_2O)_<12>]^<5+>および[Mo_4OS_3(H_2O)_<12>]^<5+>、を合成し、X線構造解析とともに物性の測定を行い、骨格内への酸素架橋の導入にともなう性質の変化についても検討した。さらにエチレンジアミン四酢酸錯体[Mo_4S_4(edta)_2]^<n->(n=2,3,4)の磁気的性質についても検討した。4)複核タングステン(V)錯体、[W_2O_2S_2(cys)_2]^<2->、および単核モリブデン(III)錯体、[Mocl_6]^<3->、を合成すると共にそれらのX線構造を決定した。5)キュバン型モリブデン錯体[Mo_4S_4(edta)_2]^<3->のFe(aq)^<3+>、VO^+_2およびキノンによる酸化反応速度について速度定数および活性化パラメ-タ-を得た。
|
