研究概要 |
半減期が75,000年のα放射体である^<230>Thの成長率や減衰龍に基づく年代測定法について、適用試料の種類を増やし、より一層信頼できる年代値を得ることを心がけながら、本研究では、以下に箇条書きする成果を得た。1.天然試料に含まれる微量のウランおよびトリウム同位体をαスペクトル法で定量するための測定システムを改良する一方、試料から上記同位体を抽出・分離・精製するための迅速で簡便な方法を開発した。 2.沖縄県南北両大東島における詳細な地質および地形調査によって、合計9地点で更新統石灰岩体の存在を確認し、合計90個の年代測定可能な未変質のサンゴ化石試料を採集した。それらの内46試料から計50の放射年代を求めたところ、両島上の更新統は、すべてが約13万年前の"最終間氷期"とそれ以降に形成されたこと、そして、当時の海面高度を指示する離水サ-フベンチの現在の海抜高度から、両島が過去13万年間に数m(北大東島が少なくとも4.0m、南大東島が6.7m)隆起したと推定した。 3.同県与那国島北西部の琉球石灰岩についても、同様の手法で詳細に検討したところ、島の北部海岸一帯に発達する最高高度約25mまでの平坦面を成す海成段丘が、約13万年前・約21万年前・約30万年前の3回の間氷期に形成された礁複合体石灰岩で構成される"多重平坦(段丘面)"であることが判明した。 4.神奈川県三浦半島に分布する津久井層産非礁性単体サンゴから、酸素同位体ステ-ジ9相当(約30万年前)の年代値を得たが、このことによって、三浦半島と房総半島の更新統が正確に対比できることになった。 5.ニュ-ジ-ランド上部更新統中の鍵層として極めて重要なRotoehu火山灰が71,000±6,000年前に噴出したことを明らかにし、同国第四系の研究にテフロクロノロジ-が有効であることを実証した。
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