研究概要 |
チューリップは開花期前後, 葉と茎に4ーメチレングルタミン(MG)を高濃度に集積した. 生育時期別に^<15>N標識培養液を供与する実験から,開花時に茎葉部に貯積したMGは,母球N約15%,冬期吸収N約30%,萠芽後吸収N約55%のN由来率を示し,萠芽後に吸収したNからも活発に合成されていることが確認された. しかしながら,開花期以降に吸収したNからのMGの合成は,根では活発に起ったが,茎葉部ではほとんど見られなかった. 更に開花後,茎葉部におけるMG含量が収穫時まで減少を続けた. したがって,MGは開花期まで茎葉部に集積するが,それ以降集積は停止し,逆に新球へのN供給源として機能するものと考えられた. 根基部より採取した導管溢泌液の分析から,根から地上部へのNの移動形能は主にGlnであり,MGは根から地上部へ移動しないことが判明した. 根においてMGは高濃度に存在し,緩慢ではあるが明らかに代謝回転していることから,込内のMGのNはGlnに渡された後移動するのかも知れない. ^<15>N標識のGlu,Gln,Leuを各器官切片に投与したところ,どの部位でもMG生成能が示されたが,その前駆体及び生合成経路については同定できなかった. チューリップの茎葉に多量に集積する未知の有機酸を単離精製し,NMR,GCMS等の分析結果から,2ーoxo-4-methyl-3-pentene-1,5-dioic acid(OMPD)と同定された. OMPDは,MGのアミド基とアミノ基が脱離し,更にメチレン基の二重結合が転移した構造を有し,MGの代謝関連物質と思われる.OMPDは葉内では収穫時まで集積傾向が認められたことから,MGの分解産物かも知られい. 22品種に含まれるMGとOMPD含量を測定したところ,両化合物とも全品種に検出され,乾物当り平均含有率は,葉でMG0.7%,OMPD8.8%,茎ではMG1.5%,OMPD5.4%であった. このうちNを多量に集積する品種ほどMG,OMPD含有量とも高い傾向が認められた.
|