研究概要 |
日和見感染病原菌に対する免疫療法を目的とするポリクロナルあるいはモノクロナル抗体の開発が続けられてきた。最近、広範な緑膿菌と交又反応を示すモノクロナル抗体、E-87、が開発され、ラムノ-スを含有する多糖がE-87抗原である可能性が示唆された。しかし、E-87抗原の構造及び抗原エピト-プも未定であり、さらに、E-87抗原が緑膿菌に広く存在しているかも不明であった。本研究はこの点の解明を目的として、研究を実施し、以下の研究成果を得た。 (1)本間血清型M及びG型の緑膿菌、P.aeruginosa IFO3080,IID1020,T424,のO-多糖画分から、D-ラムナンを単離した。化学組成、^1H-及び^<13>C-NMRスペクトル分析、施光度測定等の結果から、三株から得られた多糖は→3)-D-Rha(α1→2)-D-Rha(α1→3)-D-Rha(α1→なる繰り返し単位を有するD-ラムナン鎖を主要構造とすることが判明した。この構造は我々が先にIID1008株より単離したD-ラムナンと同一であった。 (2)拮抗的酵素結合抗体法による解析で、IFO3080,IID1020,T424株から単離した多糖標品はIID1008株のD-ラムナン同様、P・aeruginosa PAC1とモノクロナル抗体E-87との結合を同程度に阻害することが判明した。従って、これら4種の単離した多糖は免疫学的にも同一である。 (3)GDP-D-ラムノ-ス合成酵素の分析システムを開発した。また、同システムを利用し、本間血清型A,D,F,G,H,I,L,及びM型の緑膿菌がこの酵素活性を有していることを確認した。酵素活性の分布はモノクロナル抗体E-87の菌型に対する結合スペクトルと密接に対応しており、上記9種の血清型に属す緑膿菌にE-87抗原の存在が示唆された。 以上の結果から、E-87抗原はD-ラムナンであり、この抗原はD-ラムナン結合リポ多糖として広く緑膿菌に存在すると推定される。また、緑膿菌の共通抗原として機能することも考えられる。
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