研究概要 |
本年度は, 3年間におよぶ研究期間の初年度にあたり, 染色体の核型分析による系統の解析を中心に研究を進めた. 以下に成果の概要を記す. 1)染色体数および核型分析による系統進化の解析:南西諸島の西表島・沖縄本島,大阪湾, 瀬戸内海, 伊勢湾, 博多湾, 高知県西部より採集した腹足類の染色体数の調査および核型分析を行ない, 前鰓類原始腹足目3種,中腹足目8種,新腹足目5種, 有肺類基眼目1種, 合計17種の核型分析に成功した. 以上の種に加え, 原始腹足目2種, 中腹足目6種, 新腹足目8種, 後鰓類頭楯目1種については, 始めて染色体数が明らかになった. 全染色体数(2n)をみると,原始腹足目が,18,24,32,36,中腹足目では,34,36,66,また新腹足目では,68,70の種が確認された. 系統発生との関連で考察すると, 染色体数は増加する傾向が, また核型では, 似た形とサイズの中部動原体型染色体よりなる核型から染色体の形やサイズに大きな変異を生じる方向に進化していることが明らかにされた. 2)形態による系統進化の解析:形態解析を行う基礎資料として, 上記の腹足類5目を含む200種以上の種を採集し, ホルマリンならびにアルコールで液浸標本とした. 一部の種については, 系統上重要な歯舌の観察を行ない, 本格的観察に備えた. 3)DNAの制限酵素分析法の習得と基礎実験:京都科学技術専門学校に出張し, 実験技術の習得に務めるとともに, 本実験に必要な主な機器を購入し, 予備的な実験を行ない, 次年度での本格的分析に備えた.
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