研究概要 |
近年マクロファ-ジは抗原情報を免疫担当細胞に与える細胞として注目されている。従って、1)リンパ組織内でのマクロファ-ジの動態を研究すること、2)抗原摂取マクロファ-ジがリンパ組織で抗体産生細胞の分化増殖にどう関与するかを研究することは、いづれも免疫学的に極めて重要な意義をもつ。 1)墨摂取マクロファ-ジの動態。(1)脾臓---墨静注後のラット脾臓から採集した墨摂取マクロファ-ジを同系ラットの脾動脈に移入し、脾内での動態を経時的に観察した。マクロファ-ジは脾辺縁洞から一方白脾髄へ、他方赤脾髄へ遊走する。白脾髄に向かったマクロファ-ジは好んでリンパ濾胞に集まる(Miyakawa et al.,Anat.Rec.,1990)。ここは抗体産生、あるいは免疫学的記憶細胞産生の場として知られたところである。さらに、マイクロファ-ジに対するモノクロ-ナル抗体で染色すると、白脾髄を遊走し、リンパ濾胞に入るマクロファ-ジは、赤脾髄などに分布するものと違った特定のマイクロファ-ジ亜群に属することが分かった。(2)胸線--自己免疫を自然発症するマウス胸線の血管は墨の透過性が高進するだけでなく、マクロファ-ジの透過性高進が認められる(Kotani et al.,J.Anat.,1988)。このことは、さらに墨摂取腹腔マクロファ-ジの静注によって確かめられ(0hmori et al.,J.Anat.,1989)、自己免疫発症と密接な関係が推察された。 2)抗原摂取マクロファ-ジの動態と抗体産生細胞の検出。我々は抗原特異的抗体産生細胞(AFC)染色法を開発し(Matsuno et al.,In:Histophysiology of the Immune System,1988)さらに、それと分裂細胞およびマクロファ-ジ亜群を同時に観察できる三重染色法を確立(松野ら細胞1988;Matsuno et al.,Cell Tisue Res.,1989)し、マクロファ-ジがAFCの分化増殖の微小環境作りに重要な役割を果たすことを強く示唆した。
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