研究概要 |
牛副腎初代培養細胞ではコリン受容体刺激により細胞外からのCa^<++>の流入および細胞内Ca^<++>貯蔵部位からのCa^<++>の遊離により、細胞内遊離Ca^<++>が増加し、開口分泌によりカテコラミンが放出される。細胞外からのCa^<++>流入は培養直後から培養全期間を通じてニコチン受容体により起こる。一方、我々は最近、細胞内からのCa^<++>遊離は初代培養直後ではムスカリン受容体刺激により起こるが、培養5日以後ではニコチニック受容体刺激に起こることを見出だし、その機構を解明するために本研究を開始した。 培養直後の初代培養細胞では無Ca^<++>培養液下ではムスカリン受容体刺激で、細胞内遊離Ca^<++>の増加(Fura-2にて測定)およびイノシトール-3,4,5-三隣酸(3,4,5-IP_3の増加はほとんど認められず、一方、ニコチン受容体刺激では細胞内遊離Ca^<++>増加および3,4,5-IP_3の増加が起こる。しかしこのニコチン受容体刺激による細胞内遊離Ca^<++>および3,4,5-IP_<>の増加は次第に減少し、培養2日後では約1/3となり、ニコチン受容体刺激による細胞内遊離Ca^<++>および3,4,5-IP_3の増加が明らかに出現した。培養5日後では、ムスカリン受容体刺激による細胞内遊離Ca^<++>および3,4,5-IP_3の増加はほぼ完全に消失し、ニコチン受容体刺激によってのみ増加が認められた。これらの結果から、3,4,5-IP_3の生成が培養期間中ムスカリン受容体連関からニコチン受容体連関へ変換することが、貯蔵部位からのCa^<++>遊離の受容体カップリングの変換の原因と考えられた。 一方培養期間中を通じて、ムスカリン受容体の変化がないこと([H^3]QNB結合実験による)および細胞内へのCa^<++>流入がニコチン受容体により起こることから、細胞膜G蛋白を介してのホスホリパーゼの活性化の経路が培養期間中にムスカリン性からニコチン性に転換したものと考えられた。今後その分子機構の解明が必要とされた。
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