研究概要 |
ポルフィリン(P)代謝並びに薬物代謝系に影響を及ぼす物質として重金属ある鉛や有機溶剤のメチルブチルケトン(MBK)、メチルエチルケトン(MEK)、抗てんかん薬のジフエニルヒダントイン(DPH)を用いた。また造血系ポルフィリン代謝に由来する赤血球遊離プロトポルフィリン(FEP)の貧血指標としての評価をおこなった。 1.ラットに鉛を復腔内投与(0,0.1,1,10,50mg/kg;短期実験、0,5,20mg/kg;長期実験)すると、短期投与ではヘムオキシゲナーゼの活性増加がみられた。これに対してシトクロムP450,b5,ヘムの低下や薬物代謝酵素活性阻害がみられた。しかし血清ビリルビン値とGPT値に明らかな変化はみられなかった。長期投与ではFEPの増加及びP450,b5,ヘムの低下や薬物代謝酵素活性阻害がみられた。肝や骨髄P代謝系への鉛の影響が判明した。 2.MBKは末梢神経障害をきたすが、この誘発機序をMBKの代謝の点から検討した。ラットにMBK等を皮下投与するとMBK(4mmol/kg)単独投与ではP450を誘導生成したが、MEK(4mmol/kg)単独投与ではP450の誘導生成はみられなかった。両者の混合投与(各々2mmol/kg)ではMBKの肝薬物代謝活性に及ぼす影響が増強された。 3.抗てんかん薬のDPHによるコプロP尿症について実験的に検討したところ、DPH経口投与(200mg/kg)により、ラット肝のP体蓄積及びFEPの増加観察されDPHが肝および骨髄のP代謝に影響を及ぼすことが判明した。 4.農村婦人の定期健診時の採血液を用いFEPの測定単位の有効性を検討し、FEPをMg/g-Hbで表わすと貧血の度合を効率よく示すことが判明、鉛貧血指標としての有効性を再確認した。以上、当初の目的に沿った実験結果が得られ、さらに現在は鉛結合性血球膜蛋白質を分離同定中である。
|