遺伝子工学的手技を用いてアポ蛋白E異常遺伝子保有者の変異部位を明らかにした。またアポ蛋白Eの変異部位と高脂血症の関係を検討し、アポ蛋白Eの生理活性部位を明確にした。以上の方法によりIII型高脂血症の発症機構を明らかにした。 1.アポ蛋白EmRNAに対する相補性DNA(cDNA)をSP64プラスミッドに組み込ませ、SP6RNAポリメラーゼを使用して^<32>PラベルしたアポEライボプローブを作製した。 健常人および高脂血症患者の白血球細胞中からDNAを抽出し、制限酵素EcoRIで切断した。このDNAとRNAプローブを用いて、アポEDNAの変異部位を明らかにした。 2.1の方法では、被験者白血球からDNAを抽出し、これを材料としている。従って試料の量が限定されるため、手技が容易でない。そのため目的領域のDNA増幅をDNAポリメラーゼTaqポリメラーゼを用いて行った(ポリメラーゼ チェーン反応PCR法)。このPCR法によるDNA増幅と合成オリゴヌクレオチドを用いてアポE遺伝子点突然変異の検出を行った。 アポEイソフォームのE_2型では、526番目の塩基シトシン(C)がチミジン(T)に点突然変異していることが明らかとなった。そのため158番目のアミノ酸アルギニンがシステインに変化しているものと推定された。このためE_2型では、アポE受容体との結合が低下し、βーVLDLを生じやすくなるものと思われる。 今後は、PCR法によってDNA増幅を行い、これを直接シークエンスすることにより、未知のアポE遺伝子点突然変異を明らかにすることが可能となり、III型高脂血症のマススクリーニングも可能となる。
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