研究概要 |
未熟児の呼吸不全に対する治療は,人工呼吸管理,肺サ-ファクタント投与等により,著しく進歩したが,体重1000g以下,在胎30週未満の超未熟児は,他の未熟児に比べ今なお高い死亡率を呈し,その多くは肺の未熟に起因する所が多い。又,従来の治療法では生存し得たとしてもいわゆるimtact survivalは少く,多くの障害を残しているのが現状である。 我々は,この分野では従来不可能とされてきた,体外循環による呼吸補助の問題点の分析とその可能性を追求し本研究を行った。 従来のECMOの問題点を分析し,(1)回路充填量を従来の1/5程度に減少させる必要があること,そのために(2)新らたな方式を導入する必要があること,さらに(3)瞬間的な血液量の動揺を極力抑えた流量の制御,等を検討した。ヘパリンコントロ-ルの問題は今回除外した。 回路充填量を小さくするための方法として,シリコンファイバ-人工肺のガス還流部に,酸素運搬能の良いフルオゾ-ル人工血液を還流させ,液ー液方式で2段構えで酸素を運搬させる「Twoーstaged Oxygenation法」を考察した。「TwoーStaged Oxygenation」とすることによって,ガス交換に加え,熱交換も一次的に行うことが可能になり,ECMO回路から熱交換器の分だけ充填量が減少可能となっただけでなく,熱交換器が無い分だけ回路が単純化し,システム全体の小型化,充填量の減少に役立った。具体的な値としては,流量30ml/分の超未熟児用ECMOの回路の充填量が,約30mlで可能となった。 動物実験にて従来の方式と比較検討した結果,フルオゾ-ル人工血液の流量を対血流比で20倍とすることにより,酸素,炭酸ガス共充分に運搬され,温度の維持も容易であることが判明した。 今後,この「TwoーStaged Oxygenation法」はヘパリンコ-ティング等の導入も含め臨床応用される可能性が充分あると考えられる。
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