研究課題/領域番号 |
62510033
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美術史
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
下村 耕史 九州産業大学, 芸術学部, 助教授 (50069514)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1988年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1987年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 自然観 / 類型 / 法則 / 調和観 / 神の原像 / 変形 / フェアグライヒリッヒカイ ト / 細部表現 / フェアグライヒリッヒカイト / 分数方式 / モデュール方式 / 人体比例 / 個性的表現 / 奇形 |
研究概要 |
研究課題について次のように報告される。 1.デューラーでは類型と法則としての自然観が強くみられ、自然は神の法則に より創造されたとの観方が自然を聖別化する。それでできるだけ自然に即した描写が 尊重され、ルネサンス期のイタリア美術と異なって、自然を単純化したり省略して表 わすことは誡められる。 2.これは作品の造形的調和を意味するデューラーの"vergleichli ch"とイタリア人の"convenienza"や"armonia"の概念の微 妙な相違にも顕われる。前者は自然法則の純粋な反映として、究極的にはエックハル トのいう神の精神裡の原像の忠実な反映を意味するものとして解釈される。後者は部 分間と部分と全体との一致を意味する。デューラー作品に顕著な細部表現は、このよ うな自然の神聖視と神の原像の反映としての美術観に起因する。 3.類似の相違は人体比例理論についてもみられる。イタリアでは美術作品は調 和と均整を表わすべきだとする理念のもとに、美は比例にありとする観方が確立され 、人体の感覚的美が求められた。そのために全長を1とする分数方式よりも面長を単 位とするモデュール方式がより適切とみなされた。他方デューラーは両方式を採用し てその精密化に努め、イタリア人よりもはるかに多様な型と詳細な測定値を求めた。 彼においては美の実現よりも現実の人間の個性的人間表現のそれに比例法は役立つも のでなければならなかった。彼の作品の人物像は実際にそれを示す。 4.デューラーでは、自然法則を逸脱しない形で、基本的形態から多様な形を作 る変形という概念がイタリア人以上に強調されることも、以上のことと関連する。美 術家をして自然法則を創作原理へと転換せしめて、その豊かな表象世界を造形作品へ と結実させ得るのは、デューラーによれば、実にこの変形の行為なのである。ヨハネ 黙示録木版画連作をはじめとする彼の豊かな作品群が、自然と伝統のデューラーによ る変形の世界を示している。
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