エックス線透過写真を利用しての、平安時代寄木彫像研究の本格的進展を目的とする本研究は、次の二点を主たる研究目的とする。すなわち第一には、寄木彫像作品に対するエックス線透過撮影技術の確立、第二には収集したエックス線透過写真資料を利用しての新たな研究成果を導き出すことである。 第一の研究目的は、正・側二方向からの全身立体的透過撮影法を確立し、さらにその方法で東北・関東・近畿・四国・九州の各地方所在の計104点に及ぶ多量の作品について、透過撮影を実施することで、当初計画通りの達成をみた。 また本研究で新たに収集されたエックス線透過写真を利用することで、従来不明のままであった京都・平等院の雲中供養菩薩像52体すべての像内内刳の実態が完全に解明されたが、これは第二の研究目的達成を意味する重要な研究成果といえる。 収集した多量のエックス線透過写真資料は、すべて整理が完了し、写真資料目録を作成した。また調査・研究および研究成果の概要は、平成二年三月刊行の研究成果報告書で報告した。
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