研究概要 |
1.今年度, "重度・重複障害幼児の集団療育(10)-子どもとの全人間的かかわりを求めて-"との標題の論文として, これまでにも実践を積み重ねてきた私どもの療育について, その基本的な考え方を整理して示すことができた. 従来の身体的アプローチ中心の技法論を超えて, 身体と心理と精神の3次元によって人間存在を据えようとする私どもの視座を, 改めてここで提起したものである. 子どもの内的な動きを追うために, 極力, 生活の場全体の中で, 心身両面にわたる反応を位置付けつつ, 事例検討を行なってきたが, この事例検討において, 療育者や親の主観的判断を活かすことによって, 先の3次元にわたる変容に迫るための方法論を確立しようと試みた. こうした視点に立っての, 新たな発達論を構築していくことは, 今後の課題であるが, この段階では, そのための足掛かりが得られたものと考えられる. 2.こうした重い障害児とかかわる療育者側の初期成長過程を明らかにしていくための研究の一貫として今年度まとめたものに, "障害を背負うこと, 人間として生きること-重度心身障害児とのかかわり体験によって得られたもの-"と題する論文がある. これまた毎年行なってきた愛知県コロニーにおける心身障害児療育実習の中で得られた成果のまとめであるが, ここでは, 障害児にかかわる者が必然的に直面せざるを得ない重要な課題の幾つかと, その課題を内面化し, 深めていく過程が論じられている. 3.これまで10数年来, この療育活動に参加してきた療育者と親に呼びかけて, 今回, 合同シンポジウムを含む同窓会を行なった. 心身障害児療育に関して, 現在何が必要とされているかについて, 広く多面的な意見交換の場となったと思われる. このシンポジウムの記録は刊行され, またその時実施した質問紙調査の結果は, 現在整理中である.
|