研究概要 |
1.ヒトの視覚系における色の情報を処理する色度チャンネルと, 明るさの情報を処理する輝度チャンネルの交互作用を調べるために, 下図のような刺激布置を用いて精神物理的な実験を行った. テスト刺激(図の黒部)の大きさは視角1°, その波長は450〜668mmまで7段階に変化し, その輝度は常に一定に保たれた. 背景順応野(図の白部)の大きさは, テスト刺激と空間的に重なる布置(A)から同心円状の布置(D)まで変化し, その明るさは1cd/m^2の白色光であった. 被検者にはテスト光の検出が要求され, 検出されるまでの反応時間(RT)が測定された. 多数の被検者を用いて実験を行ったが, その中の1名(HS)の結果を右図に示めす. グラフの縦軸はRT(単位msec), 横軸は波長(単位mm)を表わす. (1)RTは布置Aの580mmで最大になり, 背景光に水車型の形状を附加するにつれて(布置BよりD), RTは小さくなる. (2)このRT・波長曲線群は, 布置Aで色度チャンネルが作用し, 布置Dでは輝度チャンネルが作用していることを示唆する. (3)2チャンネルのベクトルモデルによるシミレーションも上述の結果を確認している. 2.赤と緑の発光ダイオード(LED)を利用して, 色刺激の時間的制御を可能ならしめるフリッカー発生装置を試作してみたが, 十分に明るい輝度が得られなかった. 光源と光学系に問題があるため, 外口の研究(JOSA,1987)など参考にして, 今後改良したい. 3.現在使用中の3光路の光学装置を部分的に再構成することによって, より精密な実験の可能性が生まれた.
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