研究概要 |
1 本研究は, 日本における産業別労働組織が,どのような構造的, 機能的特質をもっているかを, 歴史的, 実態的に解明することを目的とした. 2 まず歴史的研究についてみれば, 戦後の主要労働争議に関して, 数多くの文書資料を収集した他, 当時の関係者から証言を収集した. これらを分析, 検討を加えた結果, 次の諸点が明らかとなった. (1)日本では戦後の約10年間, 企業別組合よりも産業別組合が運動思想における主流の位置を占め, 産業別労使関係が主たる労使関係制度を作りだしていた. (2)1955年前後, 主要な産業において大争議が瀕発し, それを契機として産業別組合の解体, そして企業別組合の時代へと推移している. したがって日本において企業別組合が制度として定着するのは, 1955年以降である. 3 1955年以降の現在に至る「企業別組合主義」の時代について, 海運, 造船, 私鉄などの各産業の産業別組織について実態調査を行なった結果, 次のことが明らかとなった. (1)これら, 日本の産業構造の中軸を支えてきた各産業においては, 現在においても, 産業別労災組織の影響力がきわめて強い. (2)最近, 労働運動の停滞がいわれる中にあって, これらの産業では, むしろ逆に組合運動の活性化の傾向がみられる. (3)各産業における組合運動の活性化の条件は, 次のものである. <1>産業別組織が産業政策を作成し, 経営者側団体との交渉, 協議を通じて, その実現に成功している. <2>産業別組織が労働条件に関するモデル水準を設定しそのための到達闘争を指導する他, 強力な産業別機能を展開している. <3>産業別組織が労働管理制度を平等原理によって再構成し, その中の人事考課の余地を少なくしている.
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