現在の日本農業において、兼業化はもとより脱農化が急速に進行しつつある。今や専業農家の存在は、農村とよばれる地域でもきわめてめずらしくなってきた。こうした中で、各種の農業生産組織が各地に誕生している。組織を媒介しながらあえて農業に志向する農民は、具体的にどのような形態で経営を行なっているのか。その中に占める農民の意識の比重はどのようなものか。それらの組織の展開過程の中には、今後の日本の農業形態を示すいくつかの要因がみられると思われる。このことを次の三つの農業生産組織を対象に解明をこころみた。 ◎愛知県安城市高棚営農組合 昭和45〜46年に発足した11人(現在9人)から成る完全協業組織である。兼業化の最もすすんだ地域に立地しており、安い地代と集落全体の支持のもときわめて順調な発展をとげ、安定した協業経営を維持している。今後もその状態は当分つづくとみこまれる。しかし、組織の安定にたよるあまり、組織の革新が欠落しつつあり、この点が当組合の最大の課題である。 ◎岐阜県瑞浪市大湫機械化営農組合 昭和50年に、それまでサラリーマンだった3人の青年たちが、いわばUターンしてつくりあげた協業組合である。当地のサラリーマン以上の年収の実現のため経営努力をおしまない。冬場に新しい作目をふやすなど創意工夫によってその目標を実現しつつある。 ◎宮城県鹿島台町山船越水稲・養鶏組合 昭和40年に発足したこの組合は、家族労働力を家族役割にしたがって2つの組合にわりあてる方式をとっている。この方式が養鶏業の不振のためゆらいでおり、解決策が見当らない。
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