この報告書は社会学理論にかんするP.バーガーの初期の論文を中心とした研究のまとめである。バーガーの研究活動としての著書が有意義なことは、その後期の豊かな理論展開の諸要素と問題を含んでいるということにある。 初期の論文は内容的に大きく二つの部分からなる。第1部は (1) 社会における個人にかかる外的・内的拘束のさまざまな点、 (2) 社会的行為の意図的性格と自由の可能性、など。第2部は、科学的な学問としての社会学自体についての方法論敵考察である。 (1) 研究対象に関して摘切な概念化が特に要求されるが、 (2) 研究結果を経験科学的に確認し、 (3) その客観性を保証する方法をとらなければならない。 バーガー社会学の特徴は、 (1) 具体性とのアノロジ的なアプローチ、 (2) 古典的な社会学をいかに総合するかについての努力、 (3) 社会学と実生活の多くの応用問題の考察、などである。 次に私はバーガー社会学を次の点で批判してみた。 (1) 彼の社会学において中心的な概念となった個人と社会は十分に規定されていない。前者は、 「非社会的」 な人間としてとらえられ、人間の自律性を前提としており、後者はデュルケムにならって 「独自な存在」 として理解されている。 (2) 社会学自体のバーガーの理解は次の点で妥当する。即ち、社会学の全体としてみた対象とその解釈的な研究方法と、実生活との関係の 「社会的な性格」 が明かにされている。 (3) バーガーの初期の論文の主要な問題は、解釈的な研究方法との関係においてとらえられた客観性が困難なことにある。 (4) この問題の解決は、 (a) 認識的秩序と規範的な秩序、 (b) 規範的な観点と倫理的観点、 (c) 社会における現実的な意味と究極的な意味との間の区別、要するに意味の次元と秩序の次元との区別を明確にすることによって得られると考えられる。
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