研究概要 |
本研究は, 高齢期における配偶者との死別が, 遺族に与える影響を明らかにすることである. そこで, 遺族が配偶者の死別後に直面した諸困難を生活面, 精神面などから明らかにする. そしてこれらの困難を克服するためにどのような要因(サポートネットワーク, 経済, 親子関係など)が作用していたかを知るために調査を実施した. すでに死別後1年, 2年と調査に協力していただいた同一対象者に対して, 3度目の調査に応じていただいた. 調査内容は, 配偶者喪失のショックやストレス, それらの精神的問題の解決の方法, 死別前と後の生活の変化(住宅, 生計, 食事, 趣味, 社会活動), 役割移行などを通じた新しい生活への適応についてである. 調査項目は, 健康状態, 本人と配偶者の就業状況と職歴, 家族構成, 同居経験, 家事分担, 生計維持の方法, 趣味, 社会参加活動, 役割意識, 生きがい, 死別ショックソーシャルサポート, 夫婦関係, 親子関係, CaS, モラールスケールなど多岐にわたる. 調査時間は2〜3時間, 時期は昭和62年12月から昭和63年2月である. 対象者数180人のうち121人(回収率67, 2%)の回答を得た. 第1回, 第2回目のデータと合わせ, ロングチュディナルな集計を行なう. 当初予定していた遺された遺族の近親者(子供, 子供の配偶者など)への聴き取り調査は, 対象者数が少ない上に, 続柄などまちまちであり, 統計的手法にはなじまないと考えた. そこで少数の典型例について, ケース・スタテーイを実施した. 対象者は死別後3〜4年を経ているためか, 多くの者がショックから立ち直っていた. これらの立ち直りのきっかけは, 49日, 1周忌, 3周忌などの行事, 仕事, 家事, 趣味などへ生きがいを求めること, 宗教仲間や家族員の援助やはげましなどであった. 今後は詳細な分析を進めていく予定である.
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