研究概要 |
到達度評価のもとでの授業過程についてのモデルとしては, 従来より, 「つまずきの回復を組みこんだ授業モデル」と「教科の指導・学習を通じての認識・情意の形成とその評価」のモデルが提起されていた. 本研究では, それらのモデルを(1)子どもを授業における目標追求活動の主体として変革できるための授業づくり. (2)発展性の学力の形成や認識形成と結びついた情意形成を明確に射程に入れた授業づくり. という観点からいっそう改善していくための研究に着手した. (研究対象としては, 小学校算数をとりあげた. ) (1)の子どもを授業における目標追求活動の主体に変えていくための授業づくりの課題としては, 以下の点が明らかにされた. 従来, 認識形成過程の最初の段階とされていた「場面理解」の内容を, 子どもが既に習得した概念や方法では解決できない場面の存在を実感し, 子どもが新しい概念・方法の必要性を直観できるようなものにしてゆくこと. このことが, 子どもによる学習目標の主体化にとっては決定的に重要である. そして, 次の「場面操作」での数学的行動が主体的に展開されるための前提となる. (2)の発展性の学力の形成や認識形成と結びついた情意形成を射程に入れた授業づくりの課題としては, 以下の点が明らかにされた. 基本性の段階の指導が学力の発展性を獲得する上での基礎条件となるためには, 「場面理解」の内容が, 新しい概念や方法を構成するすべての要素を含んだものであることが必要である. 到達度評価の情意形成については, 課題の性質・内容そのものについての子どもの認識, 「わかる」, 「理解する」ことそのものについての子どもの認識が, 情意形成にどのようにつながっていくかを見ていくことが重要であることが明らかにされた.
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