研究概要 |
近年の戦国大名研究は, 貫高制論と検地論を基軸として戦国大名権力の歴史的位置づけを論じてきたが, その研究対象は今川・武田・後北条氏などの東国大名中心であり, しかも検地帳類や検地関係文言の個別的分析からただちに検地の施行原則や貫高制の歴史的性格を論ずる傾向が強かった. これに対して本研究では, 西国の戦国大名の典型と目される戦国大名毛利氏と, それに先行する大名権力である大内・尼子両氏を主たる素材として, 室町期から豊臣期にいたる検地事例の検出・確定作業をふまえて, 西国における戦国大名検地と貫高制の歴史的性格を, 知行制と農民支配体制の両面から明らかにしたいと考えた. そこで本年度は, 戦国大名検地と貫高制に関する研究動向を整理するとともに, 検地と貫高制に関する史料を収集するため, 毛利および大内・尼子氏の史料が豊富な山口・島根両県を中心に14回におよぶ史料調査を実施した. その結果, 多数の新史料を収集するとともに, 既刊史料の誤りを訂正することもできた. 同時に既刊史料集からも関係史料を収集し, 検地事例の確定, 編年的, 地域的整理をおこなった. この整理にもとづいてまず戦国大名検地の総決算ともいえる毛利氏の惣国検地を具体的素材として, 検地がどのような体制の下でいかなる手続きをへて実施されたのか, その具体的過程について究明し, その一端を「毛利氏惣国検地の実施過程」と題して口頭発表した(広島史学研究会大会日本史部会, 1987年10月). 今後は, さらに史料収集につとめるとともに, 大内・尼子両氏との関連において毛利氏の検地と貫高制の歴史的性格を明らかにし, 戦国大名研究全体のなかに位置づけたいと考えている.
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