研究概要 |
研修計画(1)の, この時期の英国政治史の検討について. 1970年代以後, 17世紀の革命観を修正しようとする動きがある. それはC.ラッセルらによるもので, 彼らは革命が原則的問題での争いではなかったと主張する. それはD.ハーストやC.ヒルらの鋭い批判をうけている. この論争には, 1960年代の州共同体学派の研究とも関連があるが, 本研究において, この論争のプロセスを整理・検討することができた. 研究計画(2)の, イギリス国教会の機構と運用の考察について. 1630年代, ロード大主教の厳格な統制は, ピューリタンのみならず, イギリス国教会の一部(後の低教会派に連なる)をも革命側にたたせることになった. 本研究においては, 聖職禄買い戻しを含むロードの教会統治政策を考察することができた. また, 名誉革命後, 審査律は廃止されなかった. それは, 政治権力は国教会の援助をえなければ統治できなかったことと教会が国家へ従屈したこととを示す. 国教会は広教会派の立場にたっていたといえるが, この, いわば国家至上権主義に対しては, 神権政治を理想とする高教会派やカトリックの側からと, 政教分離・自由教会体制を理想とする分離派その他の系譜をひく側からとの反対があった. 本研究においては, これらの対立と展開のプロセスを整理し, とくに18世紀初頭のバンゴー論争の考察を行なうことができた. 研究計画(3)の, この時期の非国教主義の運動の考察について, とくに革命の進展過程においてみられた非国教主義の運動について, 近年公にされた若干の研究を検討した. その中で, M.トルミーやB.レイらの諸セクトの活動にかんする研究は注目に値するものであった. 以上, 当初掲げた計画にそって研究は進められた. 来年度以降, 個別的テーマでの研究論文をはじめ, 16〜18世紀の政治社会の変化のプロセスの全体像を画いた論著を発表していく予定である.
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