研究概要 |
1.所期の目標 (1)中世から近世初期にかけての絵巻物, 奈良絵本の画中詞(絵の中に直接書き込まれた, 登場人物の台詞, 場面の説明等)を収集し, (2)本文・絵を参照しつつ解読し, (3)『画中詞資料集』の作成に備える. 2.研究の実施 (1)東京・名古屋市・金沢市・和泉市・鳥取市・島根県津和野町・福岡市・島原市等に十数回出張し, 未紹介資料を中心に, 画中詞の収集(筆写・撮影)を行った. 主な出張先は, 尊経閣文庫・静嘉堂文庫・サントリー美術館・成巽閣・和泉市久保惣記念美術館・福岡市美術館・島原文庫その他個人の蔵書家等. 主な収集資料は, 『鼠草紙』(各種)・『七十一番職人歌合』(各種)・『尹大納言絵詞』・『新蔵人物語』・『福富草紙絵巻』・『おようのあま絵巻』等. 一部, 予定していながら, 所蔵者の都合で調査できなかった資料が残ったが, 一方新発見の資料も数点あった. (2)収集した資料を整理し, 既紹介の資料と併せて, 画中詞の解読に当った. 解読に当っては, まず画中詞を翻字し, 次いでそれに対する釈文(原文に句読点・濁点を施し, 適当な漢字を宛てた文)を作った. その際, 画中詞が絵と本文の接点であるとの観点から, 絵巻物・奈良絵本が総合的に捉えられるよう, 殊に留意した. その結果, 当時の口語・風俗・習慣等に関して, 多くの新知見が得られた. なお, 一部虫損等で判読不明の箇所や, 難解な語, 誤字かと思われるが不明な箇所が, 今後の課題として残った. この整理・解読作業に, 3名の学生アルバイトを用いた. 3.今後の課題 (1)解読ができずに残った資料の解読を進める. (2)既紹介, 未紹介の資料を併せて, 主たる作品約百点について, 『画中詞資料集』(画中詞本文に釈文を施し, 要語索引を付する)を作成する. 完成には約三年を要する見通しである.
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