研究概要 |
モダル文(モダル化された文)中におけるモダル動詞やモダル副詞その他モダリテートを担う語の個々のふるまいでなく, モダル文発語の背景と状況を考慮に入れて文全体の解釈に役に立つ一般的方法を考えるのが当初の目的だったが, モダリテートの現象は文法, 意味, 語用のレベルにまたがるものであり, モダル化は発語そのものによっても生ずるところから, その点をふまえての定式化とはどのようであるべきかを研究した. その際, 背景のどの範囲をとるか, 状況の何をとるかを明らかにし, さらに状況と背景をそれぞれどんな形に定式化するかを定めなければならない. この定式化の試みの過程で, 言語表現の中では不規則な時制や否定の影響を吟味する必要が起った. そこで, 一般的現象ならびに不規則な現象とされているものを洗い出した. その際, ドイツ語や英語, 仏語だけではモダリテートとこれらの言語事象とのかかわりが明らかでない場合もあるので, 日本語からの資料も揃えて取った. ここまでの研究の一部分1987年ベルリンでの世界言語学者会議で, Time,Modality and Negationの題目で発表した. 不規則であることがある一レベルだけのことであって, 解釈規則とそれに付随する適当な条件が与えれれば適性な解釈ができるケースを主として取り上げた. 外見上は不規則と見られる表現上の不整合性を標準的定式と解釈規則, 解釈条件の組合せによって正しく解釈しようというものである. 解釈規則のために必要な意味概念的側面からの研究の一部分は論文「モダリティと基本概念(1)」として発表した. 背景と状況を最大限に利用する広い解釈規則, 条件とその運用についてはなお研究中である.
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