研究概要 |
本研究の目的は、チベット=ビルマ系ロロ=ビルマ語群ビルマ語系諸言語の比較研究のための基礎資料を整備することであった。そのために、当該言語の資料(自らの現地調査によるものとすでに内外で公刊されたもの)を調査表の語彙項目に従って整理分類し電算機に入力(一部未完了)した。対象とした言語は、ビルマ語(ラング-ン=マンダレ-、アラカン、タボイ、メルギ-、インダ-、ダヌ、タウンヨウ、ヨ-の諸方言);マル語,ラシ語,アツィ語,パラ語;アチャン語;ポン語;マルマ語である。 現地調査で媒介言語として使用したビルマ語の語彙項目の個々の単語の意味領域の再検討を試みた結果、調査言語の対応する単語との意味の微妙な差異を十分把握できていなかったものがあるのがわかった。そのままでは、漸次的に意味の連続している時間や色彩のような語彙の体系の的確な記述はむずかしい。 内外で公刊された資料からの推論により、自ら現地調査で蒐集した資料の不足からくる不明確な解釈を補正し、語彙・文法の体系の記述の一部を明確にしえた。 ビルマ語のなかのモン語借用語彙(文化語彙の一部)を唆別することにより、ほかのビルマ語系諸言語において一見ビルマ語と同源形式とみなされそうなものを借用語と判定することができるようになった。 ビルマ語系祖語(Proto-Burmish)の再構成は、音韻面ではあまり問題がないが形態面では附属形式について同源形式が求めにくいなど、困難な点もあることがわかった。ビルマ語系諸言語で、ビルマ語との一致を示さない形式については、ロロ語系の言語とのあいだに同源形式を求めることができるものが少なくない。ひきつづき、その点をも考察する必要があろう。
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