研究概要 |
本研究は正領地を中心とするイギリス森林法の史的展開をとくに, 森林解除にともなう森林のあり方とそこに係わる住民の入会権とオープンスペースの展開を検討することを課題とした. 細い分析に必要な断片的史料のマイクロフィルムによる取寄せに予定より時間がかかり(先方の都合で), その分析を踏まえた全体的なまとめにはしばらく時間を必要としているが, 今期の成果としてウィンヴルドン入会地における森林慣習の展開とエッピング森林における森林法の内容と入会権の史的発展, そしてディーン森林およびニュー森林の資料分析を終え, ウィンヴルドンとエッピングについては論文済, ディーンとニューについては1988年度中に発表の進行となっている. これらの具体的資料に基づく個別分析をとうして, 本研究テーマの出発点であるイギリス史の見直しについては, これらの森林における生産(農・工)の史的重要性が仮説に基づいて検証できたが, その理論的まとめはもう少し時間を要する. より専門的な仮説から今期の内容上の成果をまとめるならば, (1)ウィンヴルドン, エッピングにおいて, 森林法の下で認められてきた入会権が, 「森林法解除」においても一定住民の特権として承認されてきた過程を経て(紛争・社会的に), ひろい意味での住民のオープンスペースとしてのアクセス権に展開したこと, (2)諸森林において歴史的に, 共有林なる形態がみられ森林経営上の慣習法的制度がイギリス森林においても重要な意味をもっていること(この点は史料に基づく新しい発見で, とくに大陸法的共同所有制度との関連で比較史的に重要), (3)^+「森林解除」にもかかわらず, そこに定住する人の森林法上の入会権, 森林法において発展した森林制度(裁判的機能を果した集会, 諸役人・行政的機関)は, その現代に及ぶ意義を少なからず維持しており, 森林社会の歴史的意義は勿論, 19世紀中葉以降もその枠組はオープンスペースたるに重要.
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